カリキュラム

言語

口頭言語―――聞くことと話すこと
 聞くことと話すことは乳児や幼児が早い時期から周辺環境の中で自然に身に着ける発達プロセスです。学校に来始める頃には、ほとんどの子どもがすでに驚くほどの母語を操る力を身に着けています。しかしながらそれまでの環境ではうまくいっていたとしても、学校での言語習得へのアプローチや期待度は得てして異なります。家庭から学校、以前の学校から新しい学校といった移行期には、本人の言語に関する学習歴を把握し、それを踏まえて新しい学習をポジティブかつ生産的な方向に確立する必要があります。

 口頭言語は聞くことと話すことのあらゆる側面を包含していますが、そのスキルは現在進行中である言語の発達や学習、そして他人との関わる上で欠かせません。聞くこと(理解)と話すこと(表現)は、聞き手と話し手の間で成り立つやり取りのプロセスです。バランスのとれたトレーニングを受け、よく練られた有意義な場に参加することで、学習者は聞き手として、また話し手としての体験を積むことができます。聞くことはただ音を聞くというだけではありません。聞いたものが意味を成すためには能動的、意識的に注意を向ける必要があります。目的を持った会話を行うことで、話し手は身の回りにある意味を構築し、さらに再構築して考えをまとめていくことができます。口頭言語は聞き手や目的に応じて特定の型の言語(家庭で使われる言葉、教室内で使われる言葉、遊ぶときに使う言葉、探究に使う言葉、友達との会話、指示を出すこと、創造的な作品の理解、空想の世界、世代間・時代・地域によって違う言葉など)を認識し、使用する作業が伴います。

 探究を中心に据えた学習環境では、口頭言語によって学習者の考えが表面に現れます。それによって「インナースピーチ」(ヴィゴツキー 1999年)が相手に伝わり、交渉や意味の構築、より深いレベルでの理解が共有されるのです。

視覚言語―――見ること、発表すること

 見ること、発表することはいつの時代も普遍的に、力強く影響力のある根本的なプロセスです。受容的プロセス(見ること)と表出のプロセス(発表すること)の間にはつながりがあり、相互に理解を増す効果があります。つまり一方がなければ他方は意味を成しません。児童にはこの双方を体験させるバランスのとれたプログラムを実施する必要があります。その過程としては、解釈すること、様々な状況で多様な目的・観衆向けに映像やマルチメディアを使用することなどが含まれます。それによりイメージと言語が相互に作用して、アイデアや価値観、信条が伝わることが理解されるのです。視覚テクストには紙や電子媒体、もしくは生の場合もありますが、見る者を瞬時に引き寄せ、データへのアクセスを可能とさせるような意識的に構成された視覚に訴えるコミュニケーションツールとなっています。例としては、広告、カタログ、コンピューターゲームやプログラム、ウェブサイト、映画、ポスター、サイン、ロゴ、旗、地図、図表、グラフ、イラスト、グラフィック・オーガナイザー、アニメ、漫画などが挙げられます。こうしたデータを解釈し、様々なメディアを理解し使いこなすことは非常に貴重なスキルです。
 情報通信技術(ICT)や視覚テクスト関連のスキルを身に着けることが極めて重要であることは、社会におけるそのインパクトを考えれば容易に理解できるでしょう。ですから視覚イメージがいかにして大きな意味づけの力を持ち、私たちの思考や感情を形作る上で強力な関連付けをもたらすかを学ぶことが大切です。イメージがもつ働きやその作りを探る機会を持つことで、視覚テクストを批判的に分析する手順を学ぶことができます。また様々な視覚テクストについて学ぶことで同時に情報の獲得源が拡大し、児童の表現能力も向上するでしょう。

書記言語―――読むこと

 読むことはテキストから意味を構築することと関わりのある発達プロセスで、読む目的や読者の事前知識、経験、またテキストそれ自体などが相互に作用します。幼児が、印字されたものに意味があることに気づき、ページに書かれたものを理解しようという関心を持ち始めたときにそのプロセスは作動し始めます。読書の成果を求める親や教師が、読むことを始めたばかりの子どもにしてあげられることは、魅力ある絵本やイラスト付きの素材に接する機会をあげることです。読書への熱意をかきたてるのに必要なのは好奇心や読みたいという気持ちです。興味をそそり、有用な情報に溢れ、創造的でぐいぐい引きつける読み物に触れて楽しむことを、すべての年代の子供が必要としています。
 読書は私たちが自分の考えや感情、意見を明確にする助けとなります。文学を通して、私たちは自分自身や他者を理解し、ものの見方が影響を受けたり形作られたりします。よく書かれた物語を読むことを通じて、人は自分自身を他者の立場に置きかえてみたり、感情や行動を追体験して共感力を養うこともできます。ノンフィクションを読み、理解する能力は探究のプロセスに欠かせません。学習者は探究をする際、テキストにある有用な情報や関連情報を特定し、総合し、用いることができなければなりません。教師は児童の興味や学習上の必要性を鑑みながら、フィクションとノンフィクションのバランスを取ることが大切です。
 子どもは読書を通じて読むことを学びます。読書の習慣を身に着けるためには、楽しむため、興味を満たすため、情報を得るためといったように様々な場面で読む時間を確保することや、質の高いフィクション・ノンフィクションを幅広く読む経験を持つことが必要です。学習者は自分自身の経験や発達段階に合った面白くて魅力的な読み物に巡り合うことができれば、読む技術や方法、理解の仕方を身に着け、将来的に、自立し自ら進んで読書に親しむようになるでしょう。

書記言語―――書くこと
 書くことは自分自身を表現することです。ごく個人的な行為で、その人と共に発達し成長します。線や印を書き始めた幼い学習者から熟練した書き手に至るまで、自らの考えや情報を目に見える具体的な形でまとめ、他者に伝える手段であることに変わりはありません。書くことは第一義的に意味や意図を伝えることと関連しています。子どもが自分自身を表現し、自分の「声」を表明する力を伸ばすには、書くことこそが真の表現方法となるでしょう。表現の質は、書かれている内容の信ぴょう性や伝えようとする熱意にかかっています。読み手が理解できるようなやり方で書き手がメッセージを共有することができたとしたら、書き手の意図は達成されたことになります。年齢が上がるにしたがって、様々な構成や方法論、文学手法(スペリングや文法、構想、文字、句読点など)を学び、スキルを上達させ効果的に使うことにも慣れていくでしょう。しかし正確さやスキルを駆使しているかということよりも、書き手が気持ちを伝えようようとし、意味ある事柄を分かち合おうとする力の方が重要です。子どもたちは書くことを通じてライティング能力を身に着けていきます。個々のスキルを身に着けるだけでは書けるようになりません。自らの考えを書いて分かち合うプロセスを経てこそ諸々のスキルが上達し、使いこなして洗練され、書いて伝える力がさらに効果的になるというものです。

算数

 児童は、レベルの高い思考スキルを使い、概念を理解する力を伸ばすことで算数を理解する力を身に着けます。算数は実際に生活の中で用いられるものであることから、知識を直接教えるのではなく、実際的な文脈の中で教えられる必要があります。以下の5つの領域について、概念ならびに実際的な理解を図ります。

  • 数字
  • 図形と空間
  • パターンと関数
  • 測定
  • データ処理

 

データ処理

 部分集合を持つ集合についての検討、比較、作成。調査の設計。大きな量を示す目盛のある棒グラフ上のデータを収集、分析する。データベースの情報を操作する。一組のデータ内におけるモードを見つけ、表現し説明し、数学的に公平な、もしくは公平でないゲームの結果を導き出すために確率を用いる。

測定

 児童は正式な方法と標準単位を用いて、長さや体積、時間、温度を推測し、測定し、表示し、比較する。精度を上げるための小さい単位(㎝、㎜、℃)の使用も含め、適切な測定の単位や手段を確定する。非標準の単位を用いて外周と面積を推測、測定、表示、比較する。お金の足し算と引き算を表し、時間については分や秒まで読んだり書いたりすることができる。

図形と空間

 正多角形とそれ以外の多角形を分類、説明し、一致させる(平面図形で合同な図形を見つけることを含む)。平面図形を組み合わせ、別の図形を作る。鏡映対称と回転対称の線と軸を認識し、回転には角度が関わることを理解し、方眼紙上で座標を用いて形を表す。

パターンと関数

 数のシステムに存在するパターンを理解し、説明し、分析する。かけ算と割り算のパターンと規則、その足し算と引き算との関係性について理解する。かけ算をアレイ図に表し、数のパターンを用いて問題を解く。

数字

 1000までの数を読み書きする、推測する、数える、比べる、並べる。十進法を使って千の位までを理解する。かけ算や割り算の問題を読み、書き、作る。足し算、引き算、かけ算、割り算を用い、問題を解くための複合的な方法について考え、答えを予測する。具体物を用いて分数を比べる。算数の用語に親しむ。

社会

 PYPの社会科では、過去・現在・将来との関連でとらえられる人々について、またその環境や社会について学びます。興味深く、急速に変わる世界についての理解を深める内容となっています。児童は個人的もしくは社会文化的アイデンティティーについて学ぶと同時に学校生活や外の世界で活発に活動できるためのスキルや知識も身に着けます。児童が身の回りの世界や歴史的・地理的影響、異なる文脈で変化する個人の役割などを理解するための真の学習課題を提供することを目的としています。

社会の要素
社会の要素
人間社会の仕組みと経済活動 人間が組織やシステムを作るのはなぜか、その方法は?ローカルそしてグローバルレベルでの人々の連携権限や権威の分配
社会組織と文化 人々、コミュニティー、文化、社会について個人や団体、社会が互いに関わり合う方法について
時間の経過とともに変わるもの、継続するもの 時間軸に沿って見る人々と出来事の関係性過去とその現在に対する影響力、将来との関わり。行動を通じて将来を形成した人々
人間と自然環境 特定の土地にアイデンティティーを付与する際立った特徴とは人々はどうやって環境に適応し、環境を変えてきたか人々がその土地でどう過ごし、そこの代理人となるか自然災害が人と構築環境に及ぼす影響
資源と環境 人と自然の関わり人々はどのように資源を割り振り、管理しているか管理の正の効果と負の効果科学やテクノロジーの発展が環境に与える影響

理科

 PYPでは、児童はすべての教科を通じて学習へのアプローチの仕方を学びます。理科では以下のような科学的スキルとプロセスの習得が図られます。

  • 注意深く観察し、データを収集する。
  • 様々な器具や手段を使ってデータを正確に測る。
  • 観察や実験の結果を説明するのに科学的な語彙を用いる
  • 探究すべき問題を特定するために疑問を認識もしくは生み出す。
  • 必要に応じて体系的な調査や変数の操作を計画、実行する。
  • 予測をたて、検証する。
  • 集めたデータを解釈、評価し、結論を導き出す。
  • 科学的なモデルやその応用(応用の限界も含む)を検討する。
理科の要素
理科の要素
生物 人間、他の動物や植物の性質、系統、行動に関する学習。これらの生物間の、および住む環境との相互作用や関係を学ぶ。
地球と宇宙 地球と、宇宙における地球の位置、特に太陽との関係性に関する学習。地球を形作る自然現象や体系、およびそれを明らかにする顕著な特徴、地球上の無限・有限の資源について学ぶ。
物質と物体 自然および人工の物質の性質、挙動と利用法に関する学習。人工物の起源と目的に合わせてどう扱われるかを学ぶ。
力とエネルギー エネルギーやその起源、保存や変換、利用法についての学習。力についての学習。発明品や機械を通して科学的理解の応用について学ぶ。

芸術

 PYPでは芸術にはダンス、演劇、音楽、美術が含まれます。児童は芸術を、コミュニケーションの手段として、また表現のための言語だと見なすよう促されます。PYPでは、芸術を学び、また芸術を通じて学ぶことは、すべての子供の発達に欠かせない、創造性や批判的思考、問題解決スキルや社会的交流を培うものだと考えられています。芸術は革新的なものの見方やテクノロジーの独創的な利用を促します。そしてそれにより児童がこの多面的な世界へと踏み出すのに十分な準備がなされるのです。

芸術の要素
  • 鑑賞
  • 創造

体育(身体、人格、社会性の発達)

 PYPにおける体育(身体、人格、社会性の発達)(PSPE)とは、概念、知識、姿勢、スキルの発展を通じて個人の健康と幸福について考える学習です。健康と幸福は学校生活や学校外で児童が経験するすべての側面と結びついています。PSPEには身体的、感情的、認知的、精神的、社会的な健康と発達があり、自身に関する理解を深め、他者との関係性を構築・維持し、積極的で健康なライフスタイルを送れるよう促します。

体育(PE)

 PYP実施校における体育は単に児童がスポーツやゲームに参加するというのでは充分ではありません。体育の目的は、身体的、知能的、感情的、社会的発達を促す応用可能な技術の組み合わせを身に着けさせ、現在、そして将来において、生涯にわたり健康的な生活を送れるような選択を促し、個人とコミュニティーの双方にとっての運動の文化的重要性を理解させることです。よってPYPでは、様々な文脈で運動について学び、また運動を通じて学習を行う具体的な機会がなくてはなりません。

人格、社会性の発達(PSE)

 PYPにおける人格、社会性の発達(PSE)は、社会的、個人的課題を対処するモデルやプロセス、基準を提供し、健康と幸福を実現します。PSEを通じて、児童は自我を確立し、状況に応じて他者と関わるための適切な社会的スキルを身に着け、自らの気持ちや感情、意思を伝えたりコントロールすることを学びます。PSEはカリキュラムの全領域に組み込まれており、児童が困難に立ち向かい、健康的なライフスタイルを選び、責任を持ち尊重される社会の一員となるために積極的な姿勢や行動を身に着ける助けとなります。

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